日本インパクト投資ネットワーク(J-IIN)は、ビジネスや投資を通じて、社会や環境にプラスの影響を与えることに関心のある人々が集う場として設立されました。J-IINでは、ビジネスオーナー、投資家とそのサポーターが、「インパクトのあるビジネス」という概念を共通理解するためのプラットフォームを創設することを目指しています。結局のところ、共通の理解があってこそ、インパクト・パートナーシップを成功させることができるのです。
私自身、過去30年間、インパクト投資に携わってきました。この間、インパクト投資について議論するイベントや会議には、投資家だけが参加し、起業家やビジネスオーナーはほとんど参加していない傾向があることに気づきました。逆もまた然りです。起業家や企業が投資家とインパクトの問題について直接話し合う機会はほとんどありません。
以前参加したウェビナーで、ある大企業の同僚がこう話していました。「最大の問題は、企業がインパクトを競争上の優位性と商業的リターンの両方に変換することができることを、投資家が理解していないこと」だと。彼女は、自分のビジネスがどのようなインパクトを生み出し、そのインパクトが自分のビジネスにどのような利益をもたらしたのかを、投資家に説明する方法を学びたいと思っていました。しかし、投資家にどのように伝えればよいのかを、彼女は分からなかったのです。この会話を通じて、ビジネスと投資家の間でインパクトに関するコミュニケーションを強化し、「同じ言語を話す」ことができるようにする必要があるという事実を実感しました。
世界には、強いビジョンを持ち、インパクト戦略を事業戦略の核としている素晴らしい企業がたくさんあります。その優れた例の一つが、インド・オーディシャ州のMilk Mantraです。この酪農スタートアップは2009年に設立され、インド初のVC出資の農業スタートアップと言われています。私は、この会社のビジネスの革新性とインパクトへの深いコミットメントにいたく感銘を受けました。ビジネス面では、同社は革新的な製品やハイテクパッケージ、新しい配送システム、迅速な顧客サービスを開発してきました。それだけでなく、Milk Mantraにとって、4万人以上の小規模酪農家は単なる牛乳の供給者ではなく、ビジョンを共有するパートナーです。同社は、受賞歴のある「倫理的な牛乳調達プログラム」を開発し、酪農家をパートナーとしてしっかりと位置づけ、公正な価格の牛乳を提供しています。地域の酪農産業を発展させることは、Milk Mantraの事業計画の中核をなすものであり、獣医師のトレーニング、冷蔵施設へのアクセス、乳牛の飼料改善、酪農家の教育、金融サービスやその他の改良普及サービスへのアクセスなどのKPIを設定しています。
世界的に見ても、インパクトの考え方や、投資先の事業のインパクトをどのように測定し、モニタリングするかに関心を持つ投資家が増えてきています。日本でも、「インパクトのあるビジネス」というコンセプトに関心を持つ投資家や企業が増えてきています。しかし、起業家や投資家がお互いの経験を共有する機会が少ないため、インパクトに関する共通の語彙が不足しているのが現状です。
J-IINでは、世界中の起業家や投資家の経験や声、事例を日本のコミュニティと共有していきたいと考えています。彼らの成功、課題、失敗に焦点を当てていきたいと考えています。インパクトがどのように定義され、測定され、伝達されているかの例を共有したいと考えています。
J-IINは、投資家とビジネスの双方が「同じ言語を話す」ことができるような対話を促進したいと考えています。日本での、そして日本からのインパクトのあるビジネスの発展をサポートしていきます。