自然の不可欠な役割と代償
自然のおかげで、私たちは社会、経済、文化的生活を営むことができます。自然なしには、食料、水、空気、生活可能な気候、生活手段、健康や幸福をうることはできません。しかし、1970年から2020年の間に、私たちは野生生物の70%以上の生命を奪いました。結果、生物多様性危機を乗り越えるため、私たちは年間7000億ドルを必要とし、2000億ドルの資金ギャップを埋める必要があります。
今年はUNFCCC、COP29、CBD COP16、UNCCD COP16といった国際的な会議が多数開催されました。ただ、自然を議論するCBD COP16では、COP15での合意にも関わらず、196か国中わずか44か国しか生物多様性戦略を提出しておらず、資金メカニズムも課題を示し、グローバル生物多様性枠組基金(GBFF)には年間200億ドルの目標に対して1億3600万ドルしか誓約されませんでした。とはいえ、先住民族や地域社会を担当する常設機関の設立は、この会議の救いとなる重要な決定でした。
一方で、2024年を通じて、希望を示す重要な発展も見られました。
1.TNFDとSBTNによる企業の説明責任
企業は対応を進めており、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)は17.7兆ドルを管理する金融機関を含む500を超える企業と連携し、自然に関する科学に基づく目標設定ネットワーク(SBTN)は科学的データに基づく透明性の高い生物多様性報告作成のための、初のパイロットプロジェクトを実施しました。これらのフレームワークより、企業が自然・生物多様性をその意思決定に統合する可能性を高めています。
2. ネイチャーテックベンチャーにおけるイノベーション
人工衛星を利用した再森林化追跡やAIによる生物多様性分析などの技術を持つスタートアップ企業は、20億ドルの民間投資を引き付け、生物多様性に取り組む上でのイノベーションの役割が重要であることを示しました。
3.デジタル配列情報(DSI)によるバイオエンジニアリングの取り込み
CBDCOP16で設立されたカリ基金は、遺伝資源の応用からの利益を、先住民族と地域社会と公平に共有することを約束し、セクター間の協力を促進する狙いを持つ一方で、関連する倫理的な問題を、世界的に合意が必要な懸案として提起する必要性を示唆しています。
4. 生物多様性クレジットの台頭
2022年に採択された生物多様性国際目標の中で、再度取り上げられて以来、35以上の方法論が開発されました。生物多様性クレジットは2050年までに年間690億ドルの市場となり、現存する重要な課題を克服することができれば、保全プロジェクトに新たな収益源を提供し、民間セクターに有望なリターンをもたらす可能性を示唆する声もあります。
5. ファイナンス規模拡大のためのブレンデッドファイナンス
300百万ドルのバハマ債務転換プロジェクトのように、公共、慈善、民間の資金を組み合わせることにより、債務課題を持つ発展途上国でも、自然再生・保護へ資金を循環させることできることを示しています。
6. ファイナンスガイダンス:新しい羅針盤
IFCの生物多様性リファレンスガイドとインパクト報告指標は、投資家に明確な道筋を提供し、ICMAのグリーンボンド基準やTNFDのような既存の原則と生物多様性ファイナンスを調和させています。
課題
ただ、依然、重要な障壁は残っています:
- 有害な補助金:年間2.5兆ドルとも推定されるこれらの補助金は再生・保護努力を阻害しています。
- データと戦略未生成:不十分なアウトカムベースの生物多様性データと遅延する国家戦略が、課題解決のためのイニシアチブの拡大を妨げています。
カーボンを超えて
「生物多様性は、気候変動に付随するものではなく、より根本的なテーマである」という考え方にたち、私たちJ-IINは、自然と生物多様性を中心に据えた、新しい経済モデルを達成するための最重要なインパクトとして注目し、民間セクターが重要な役割を果たすことに声を上げていきたいと思います。